特別講演2:平山 和美 先生
山形県立保健医療大学
座長:石岡 俊之
埼玉県立大学保健医療福祉学部作業療法学科
演題名:「驚き」と「だったりして」から研究へ
誰もその全体を知ることはできないが、自然科学は明示された、あるいは暗黙の、仮説の体系に基づく。研究の仕事はこの体系をより真に近づけることであり、臨床研究の仕事は役立つものにもすることである。そのためには、すでに多くの人がそうだろうと思っていることを大変多くの対象や試行で確かめる研究や、精密に調べる研究も重要である。しかし、一般の臨床家が容易に行えるものではない。
「驚く」の原義は「意識していなかった物事に、はっと気づく」である。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる」の「驚く」である。目が覚めるという意味もある。「だったりして」は、既存の知識から直接は導かれない、しかしありえなくはない少し変わった考えが思い浮かんだときの言葉である。未知の部分が多い行動神経学では、この二つの契機が仮説の改良につながることが多いと思われる。そのような機会は一般の臨床家にも広く開かれている。私が参加し近年報告されたその種の研究のいくつかを中心に、契機からの紆余曲折を具体的に紹介し、皆様の参考にしていただければと考えている。