テーマ:継承と革新 ー神経心理学が拓く作業療法の可能性ー

日時:2023年7月15日(土) 10:00-17:30

会場:かでる2・7 北海道立道民活動センター&Zoom ※ハイブリッド開催

 

 

特別講演1

特別講演1: 森 悦朗 先生

大阪大学大学院連合小児発達学研究科 行動神経学・神経精神医学 教授

東北大学名誉教授

 

座長:伊藤 文人

東北大学大学院教育学研究科

 

 

演題名:臨床研究:症例研究から集団研究へ

臨床研究において,症例研究から集団研究に進めていく過程について考えてみたい.私の場合,ほぼ全てにおいて症例研究から着想や知見を得て,それを集団研究でより確実な証拠として示すようにしてきた.そうしなければ心が落ち着かないし,人前に堂々と披露するわけにはいかなかった.もちろん,ほぼ間違いないだろうという自信があるものしか集団研究に進めてはいない.バイアスや交絡因子に配慮しながら集団研究を計画することは臨床研究の面白さでもあった.自信はあっても症例研究で留まっているものもあるが,それは私の力量や努力が足りなかっただけで,誰かに昇華させていただきたい宿題なのである.

 

 

特別講演2

特別講演2:平山 和美 先生

山形県立保健医療大学 

 

座長:石岡 俊之

埼玉県立大学保健医療福祉学部作業療法学科

 

 

 

 

演題名:「驚き」と「だったりして」から研究へ

誰もその全体を知ることはできないが、自然科学は明示された、あるいは暗黙の、仮説の体系に基づく。研究の仕事はこの体系をより真に近づけることであり、臨床研究の仕事は役立つものにもすることである。そのためには、すでに多くの人がそうだろうと思っていることを大変多くの対象や試行で確かめる研究や、精密に調べる研究も重要である。しかし、一般の臨床家が容易に行えるものではない。

「驚く」の原義は「意識していなかった物事に、はっと気づく」である。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」の「驚く」である。目が覚めるという意味もある。「だったりして」は、既存の知識から直接は導かれない、しかしありえなくはない少し変わった考えが思い浮かんだときの言葉である。未知の部分が多い行動神経学では、この二つの契機が仮説の改良につながることが多いと思われる。そのような機会は一般の臨床家にも広く開かれている。私が参加し近年報告されたその種の研究のいくつかを中心に、契機からの紆余曲折を具体的に紹介し、皆様の参考にしていただければと考えている。