テーマ:学際的視点による人間理解の再構築:過去から学び未来を拓く10年
日時:2025年7月12日(土) 10:50-17:45
会場:KOBE Co CREATION CENTER センタープラザ9階
講師:月浦 崇(京都大学大学院人間・環境学研究科)
座長:澤村 大輔(北海道大学大学院保健科学研究院)
タイトル:社会的文脈におけるヒト記憶の神経メカニズムと加齢変化
ヒトの記憶は加齢や脳損傷などの神経系の生物学的変化によって抑制的な影響を受ける一方で、他者との社会的関係性や社会的価値などの社会的文脈によって促進的な影響を受けることが知られている。本講演では、このような生物学的要因と社会的文脈による要因の相互作用によって、ヒトの記憶(エピソード記憶)とその基盤となる神経メカニズムがどのように変化するのかについて、これまでに進めてきた認知神経科学的研究を報告する。また本講演では、講演者が領域代表を務めてきた学際的研究プロジェクトである学術変革領域研究(A)「生涯学」についても簡単に紹介する。
ご略歴
宮城県出身。東北大学教育学部から同大学大学院医学系研究科博士課程に進み、2001年博士号取得(障害科学)。独立行政法人産業技術総合研究所脳神経情報研究部門研究員、デューク大学(アメリカ)認知神経科学センター客員研究員、東北大学加齢医学研究所准教授、を経て京都大学大学院人間・環境学研究科准教授に着任。2017年より現職。脳機能イメージング(fMRIなど)や脳損傷患者への神経心理学的方法、健常者への実験心理学的方法等の多様な手法を組み合わせてヒト記憶の脳内メカニズムを研究している。これまでに日本心理学会国際賞(奨励賞)(2009)、文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2011)等を受賞。
講師:阿部 修士(京都大学人と社会の未来研究院)
座長:伊藤 文人(東北大学大学院教育学研究科)
タイトル:意思決定の認知神経科学―収監中の囚人とカジノ顧客の研究事例から―
本講演では、これまで講演者が進めてきた意思決定の認知神経基盤に関する研究を紹介する。具体的には、1) 収監中の囚人を対象とした、サイコパスの嘘の神経基盤に関する研究と、2)
カジノ顧客のバカラのプレイデータ分析に基づいた、ギャンブルへののめり込みに関する研究を取り上げる。意思決定のメカニズムに関する基礎研究としての側面だけではなく、臨床的な意義についても考察を加えることで、議論を深めたい。
ご略歴
北海道出身。東北大学文学部人文社会学科から同大学大学院医学系研究科博士課程に進み、2008年博士号取得(障害科学)。日本学術振興会海外特別研究員(ハーバード大学)、京都大学こころの未来研究センター特定助教、准教授を経て京都大学人と社会の未来研究院に着任。2024年より現職。脳機能イメージング(fMRIなど)や脳損傷患者への神経心理学的方法を中心に分野にとらわれない多角的な研究手法で人間の意思決定―特に正直さ・不正直さを生み出す神経機構を研究している。これまでに東北大学総長賞(2008)、日本心理学会国際賞(奨励賞)(2015)等を受賞。