アンダーマイニング効果の神経基盤

リハビリテーションや教育に限らず、人の行動や意思決定において動機づけは重要な役割を持っています。今回ご紹介する研究では、外発的な動機づけと内発的な動機づけの関連が検討されています。どちらもパフォーマンスの維持・向上には重要かもしれませんが、外発的な動機づけは、内発的な動機づけを弱めてしまう場合があるようです。

 

要約

人は報酬によって動機づけられると広く信じられている。一方で、一部の研究はある課題のパフォーマンスに基づいた外発的な報酬が、その課題に対する内発的な動機づけを弱くしてしまう可能性があることを示している。現代の世の中ではパフォーマンスに基づいて報酬が決められるシステムが急速に広がっており、この“アンダーマイニング効果”はタイムリーで経験的な示唆を持っている。このアンダーマイニング効果は、金銭報酬が純粋にモチベーションを高めるとする経済学の理論や強化学習理論に対する理論的な挑戦でもある。この挑発的な現象は経験的にも理論的にも重要であるにも関わらず、その神経基盤は明らかにされていない。我々は新しく開発したタスクを用いて、このアンダーマイニング効果を引き起こし、機能的MRIを用いてその神経基盤を検討した。その結果、パフォーマンスに基づいた金銭報酬が内発的な動機づけを弱めることが明らかとなった。また、アンダーマイニング効果に伴って、前部線条体と前頭葉領域の活動が低下した。これらの結果は皮質‐基底核評価システムが外発的報酬の価値と内発的なタスクに対する価値を統合することによってアンダーマイニングが引き起こされることを示唆している。

 

外発的動機づけと内発的動機づけについて

この論文の著者である玉川大学脳科学研究所の松元健二教授のホームページにわかりやすい解説が載っていますので、ご覧ください。

http://www.tamagawa.ac.jp/teachers/matsumot/matsumoto_lab_jp/commentary.html

 

Kou Murayama, Madoka Matsumoto, Keise Izuma, and Kenji Matsumoto (2010) Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation. Proc Natl Acad Sci U S A. 107 (49) : 20911-6.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21078974