パーキンソン病における認知症の予測因子:前向きコホート研究

 

 

近年、パーキンソン病 (PD)における認知症 (PDD)の発症予測について盛んに研究が進められています。その背景には発症から10年以上経過する進行期のPD患者の少なくとも75%が認知症を発症するという高い発症率の問題があります (Aarsland and Kurz. 2010)。またPDDの発症に伴う精神症状の出現、QOL低下、死亡率や介護負担の増加など非常に多くの問題が指摘されているため、早期にPDDの発症を予測し、より適切な治療・介入

 

に繋げていくことが急務とされています。今回は、主にPDの非運動症状に注目し、どのような因子がPDDの予測に有用であるかを縦断的に検討した論文を紹介します。

 

 

 

〈要旨〉

 

【目的】パーキンソン病 (PD)における認知症の予測因子を調査した。

 

【方法】認知症のないPD患者80名を対象に自律神経系、睡眠、精神、視覚、嗅覚、運動症状の包括的な評価を施行した。4.4年後のフォローアップ時、認知症の評価が行われた。予測変数は罹病期間、フォローアップ期間、年齢、性別を調整したロジスティック回帰分析を用いて評価された。

 

【結果】PD患者80名のうち27(34%)が認知症に進行した。認知症に進行したPD患者らは高齢であり、多くが男性であった (オッズ比[OR] = 3.64, p = 0.023)。初回評価時に軽度認知機能障害 (MCI)のあったPD患者らは認知症への移行リスクが高かった (OR = 22.5, p < 0.001)。またREM睡眠行動障害のあった患者らは認知症のリスクが著しく高かった (OR = 49.7, p = 0.001)。しかし日中の眠気と不眠はどちらも認知症を予測しなかった。初回評価時に、より血圧が高かった患者は認知症のリスクが増加した (OR = 1.37/10 mmHg, p = 0.032)。また起立性低血圧が認知症のリスクと強く関係しており (OR = 1.84/10 mmHg, p < 0.001)、収縮期血圧が10mmHg以上低下するとそのリスクは7倍にもなった (OR = 7.3, p = 0.002)。色覚異常は認知症のリスクを高めたが (OR = 3.3, p = 0.014)、嗅覚障害では認められなかった。運動指標に関して、UPDRS-part3の歩行 (OR = 1.12, p = 0.023)、転倒 (OR = 3.02, p = 0.042)、すくみ足 (OR = 2.63, p = 0.013)、その他ペグボード (Purdue pegboard test)(OR = 0.67, p = 0.049)、タッピングテスト(Alternate tap test) (OR = 0.97, p = 0.033)が認知症を予測した。

 

【結論】心血管系自律神経障害、REM睡眠行動障害、色彩弁別能力、歩行障害がPDにおける認知症をより強く予測する。

 

 

 

この論文の研究グループは以前よりPDDRBDの関係性についてpolysomnograpy (睡眠ポリグラフ検査)のような生理指標を用いて精力的に研究を進めており、今回の研究結果も彼らの仮説を支持するものとなっています。しかし、PDDの予測に有用な因子については今回有用性が認められなかった因子を含め、脳画像の知見など様々報告されており議論の的になっています。作業療法場面においてPD患者の予後を検討する上でもこれらの知見は非常に重要になると思いますのでぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

Predictors of dementia in Parkinson disease: a prospective cohort study

 

Anang JBGagnon JFBertrand JARomenets SRLatreille VPanisset MMontplaisir JPostuma RB. Neurology. 2014.

 

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25171928