注意機能と記憶に対する内発的、外発的動機づけの効果

 

 

 Motivationが神経心理学的検査に大きな影響を与えていることはよく知られています。この研究は動機づけの個人差や条件差によって、注意、記憶課題の成績にどのように影響するのかを検討した論文です。

 

 40名の健常被験者はAttention network taskANT)、とNewcastle spatial memory testNSMT)で評価されました。Base lineとして各課題の評価実施後、被験者はMotivationの条件を変えるために、①課題成績によって、2030ポンドの範囲で報酬額が変わる条件と②課題成績にかかわらず25ポンドの報酬をもらえる条件とにランダムに割り付けられました。各条件間で課題成績を比較したところ、①条件のMotivated群は②条件の対照群に比して、NSMTANTの成績が向上し、特にANT課題のalert(覚醒)の成績が向上し、ターゲットと不一致の妨害刺激の影響を受けにくくなっていました。また内発的動機づけを測定する尺度(Intrinsic motivation inventoryIMI)の下位因子であるenjoyment / interestの得点とNSMT課題のerrorの間には負の相関が確認されました(つまりenjoyment / interestの因子得点が高ければエラーが下がる)。以上より、動機づけの個人差、条件差は注意、記憶の神経心理学的検査の成績に影響を与えることが確認されました。筆者らは限界として内発的動機づけと、外発的動機づけの分離ができなかったことを挙げています。

 

 

 

※内発的動機づけ:課題を行うこと自体が楽しいなど、個人の好奇心や関心によってもたらされる動機づけ

 

※外発的動機づけ:お金をもらえるからやる、などの外的な賞罰や義務などによって生じる動機づけ

 

Attention network taskANT):真ん中の矢印がどちらの方向を向いているのか、周りの刺激に惑わされずに判断する課題

 

Newcastle spatial memory testNSMT):カップの中にものを隠し探索させる課題。同じカップを開けた回数や非効率的な探索がエラーとしてカウントされる。

 

 

 

Lucy J. Robinson, Lucy H. Stevens, Christopher J.D. Threapleton, Jurgita Vainiute, R. Hamish McAllister-Williams, Peter Gallagher. Effects of intrinsic and extrinsic motivation on attention and memory. Acta Psychologica 141 (2012) 243–249.