この論文要約ページでは,理事メンバーが興味を持った論文の紹介をしています.各メンバーの意訳や英語力不足などで不正確な個所があるかもしれませんので,正確な内容についてお知りになりたい方は元論文をご確認いただければと思います.

集団の合意形成に関わる神経基盤-計算論モデルによるアプローチ-

人の脳の研究というと,皆様方には神経心理学や臨床神経学といった分野がなじみ深いかもしれません.こういった学問分野では,脳損傷患者を対象とした研究から特定の脳領域がどのような役割を果たしているか検討を行うことが一般的です.一方で,functional MRIMEGに代表されるように,健常者の実験課題遂行中の脳活動から,脳の機能を明らかにしようとする研究(賦活研究)も盛んに行われています.

 

今回ご紹介する研究は,functional MRIと計算論モデルを併用した研究です(計算論モデルを使った研究の特徴は,ざっくりいうと人の行動や脳活動のパターンを数式で表そうと試みる点です).今までの脳機能画像研究は,実験協力者に画像などを呈示し,何らかの基準によって判断をしてもらうケースがほとんどで,誰かとやり取りをしている際の脳活動を測定するということはあまりされてきませんでした.

 

この研究では,なんと一度に6人!の実験参加者を募って研究を行っています.具体的には,1人はMRI撮像中に左右に呈示された2つの商品のうちどちらか好きな方を選択する課題を行い,それと同時刻に残りの5人もリアルタイムで同様の課題を行うというものです(なお,この5人のMRI撮像はしていません).

 

この研究の非常に面白い点は,計6人で合意が形成されれば(つまり,全員が同じ商品を選択すれば),選択した商品を実際にもらえるという点です.逆に言うと,全員での合意が形成されなければ(つまり,全員の選択が一致しなければ)その商品をもらうことはできません(細かな実験の設定については省略しますが,この研究では他の実験参加者がどちらを選択したか知ることができ,同じ商品のペアが数回出てきます.そのため,他の参加者の好みに合わせて各々の実験参加者が商品のペアに対する選択を1回目と2回目で変えるということが可能となっています).

 

結果については,筆頭著者の鈴木真介さんが執筆した非常にわかりやすい日本語のレビューがありますので,そちらをお読みになっていただければと思います.

http://first.lifesciencedb.jp/archives/10005

 

元論文

Shinsuke Suzuki, Ryo Adachi, Peter Bossaerts, John P. O’Doherty

Neural mechanisms underlying human consensus decision-making.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25864634

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作業を基にした作業療法と機能を基にした作業療法の比較: 無作為化比較された予備研究

 

 

日本の作業療法士の亜急性期(回復期)の脳卒中患者へのADOC (Aid for Decision-making in Occupation Choice) を評価に用いた実際の作業への介入と患者の汎化された活動やADLに従った従来の評価と機能改善を主とした介入による変化を比較検証しています.結果の中に危険率(有意確率p<0.05など)だけでなく,効果量(effect size)にて群の差を検証しています.研究における差の検出には,危険率は,標本数の影響を受けるため標本数の影響を受けない効果量.信頼区間(CI)も併せて検証されることが求められつつあります.また,この効果量は研究を開始する前の妥当な標本数(参加する対象者の人数)を考慮する際にも使用されます(検定力分析).一度,統計の用語の整理をされると統計の危険率が絶対でないことを理解して論文を読む機会になると思います.

 

 

 

目的:作業を基にした作業療法と機能を基にした作業療法の比較と患者の募集と保持(研究期間時の脱落者がないこと)の実行の可能性を測定するため

 

研究デザイン:一重盲検による多施設,無作為,比較予備的トライアル

 

環境:回復期リハビリテーション病棟

 

参加者:回復期病棟入院中の脳卒中患者54

 

介入:ADOC (Aid for Decision-making in Occupation Choice) を評価に用いた実際の作業への介入と患者の汎化された活動やADLs従った従来の評価と機能改善を主とした介入

 

主たる評価指標:QOLの指標としてSF-36ADLの指標としてFIM,運動機能としてBrunnstrom recovery stages,主観的な満足度としてClient Satisfaction Questionnaire,在院日数

 

結果:16か月の登録期間で1465名の対象者の内,54(3)が登録でき,2か月間の研究期間時には36(作業介入群16名,通常介入群21名:原著の人数をそのまま記載しております)が残った.結果,両群に統計的な差は認めなかった.作業介入群においてQOL尺度のSF-36の下位項目の「全体的健康感:健康状態の主観的な感覚」と「日常役割機能(精神):日常の生活,仕事を行う上での心理的な理由による問題の有無」は,効果量小のアドバンテージを認めた.

 

結論:大規模なトライアルによる検証が必要であるが,効果量小のアドバンテージから作業への介入を行うことは,主観的な健康感の向上やや日常の生活,仕事を行う上での心理的な理由による問題の減少に効果があるかもしれない.

 

 

 

TitleComparison of occupation-based and impairment-based occupational therapy for subacute stroke: a randomized controlled feasibility study

 

 

 

AuthorTomori K, Nagayama H, Ohno K, Nagatani R, Saito Y, Takahashi K, Sawada T, Higashi T.

 

Clinical Rehabilitation 2015, Vol. 29(8) 752–762

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25381345

 

 

 

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Salience Networkの損傷とDefault Mode Networkへの影響

 

 

Salience Networkの損傷とDefault Mode Networkへの影響」

 

近年、Salience Network (SN)Default Mode Network (DMN) の相互作用は認知機能のコントロールに重要であるとされています(Fransson, 2005; Kelly et al., 2008; Sridharan et al., 2008;

 

 Menon and Uddin, 2010; Bonnelle et al., 2012). 特にcognitive control proposesモデルの一つとしてSNkey regionであるright anterior insula (rAI)DMNを含む他のネットワークの活動に相互作用を持っていることが報告されています(Sridharan et al., 2008; Chiong et al., 2013)。今回は外傷性脳損傷(TBI)、健常コントロールを対象とし、認知課題(2種類の抑制課題)遂行中の脳活動を測定することでSNの損傷がDMNにどのような影響を及ぼすのかを検討した研究を紹介致します。

 

 

 

対象:実験1(Stop signal task

 

TBI group 1: 57(11 females, mean age 36.7±11.5 years, range 18-62 years)

 

      Healthy Control: 25

 

      実験2Switch task

 

      TBI group2: 31(10 females, mean age37.3 ±11.9 years, range 20-62 years )

 

      Healthy Control: 20

 

30例の healthy controlDTI撮像のみで参加

 

 (16females, mean age 37.2±8.9 years)

 

  実験1と実験2は異なる被験者を対象にしている

 

 

 

課題:実験1Stop signal task

 

実験2Switch task

 

両課題共にボタンで応答する。

 

l  Stop signal taskについてはstop signal delay(SSD)の後20%の割合でstop signalが出現する。

 

l  Switch taskについては色に応じて左右ボタンで反応する。「SWAP」の文字が出現するとボタン反応が左右逆になる

 

例:赤→右ボタン、青→左ボタンであるが「SWAP」出現により、赤→左ボタン、青→右ボタンと左右反応が逆転する

 

 

 

構造画像および機能画像Philips Intera 3.0-T MRI scanner

 

T2*-weighted gradient-echo echoplanar imaging

 

T1-weighted wholebrain structural images

 

*患者はstructural brain imaging DTI を撮像

 

 

 

Psychophysiological InteractionsPPI)解析を実施。

 

rAI(島前部),dACC(前部帯状回背側部),IFG(下前頭回)の3つをseed region として座標は先行研究を参考に決定

 

 

 

結果:

 

Signal change(Stop trials versus Go trials)

 

 

 

A. Stopping task

 

    controlグループにおいてPCCが有意に活動が減少する

 

 

 

B.  Switching

 

  controlグループにおいてrAIが有意に活動が上昇する

 

 

 

TBIグループはDMNの活動減少、およびrAIの活動増加の変化が乏しい

 

 

 

 

 

PPI analysis (seed region 3つとDMN領域)(Stopping and Switching)

 

 

 

StopSwitching共にコントロールではrAIDMNな相互作用を示す。

 

 

 

抑制にはrAIDMN間の機能的関係が示唆されるが、TBIでは認められない

 

 

 

 

 

考察

 

コントロール群において反応抑制の際には通常rAIDMNFC増加が認められた。rAIDMNを含むネットワークの司令塔としての重要な役割がある可能性が示唆された。またSN tractDMNrAIPPI strengthに有意な正の相関が認められた。外部刺激に注意を焦点化させる際にはDMNはその負荷に応じて活動が減少する、またDMNの活動減少の失敗は注意障害と密接に関連することが報告されています(Singh et al., 2011; Weissman et al., 2006)。さらにSNおよびDMNの活動変化が大きいほどより効率的な認知コントロールができることも報告されている(Kelly et al.,2008)ことからもSNDMNは密接な関係にあることが示唆されました。

 

 

 

コメント

 

ついつい活動が上昇する脳部位に着目しがちですが、deactivationというかたちで相互作用のあるDMN領域の活動変化も同時に着目していかなければならないことを改めて考えさせられました。また今回は反応抑制と注意の切り替えが要求される課題ですが、DMNの活動停滞は他の広範な機能に影響を及ぼす可能性が考えられるのではないかと思いました。今後は活動の背後にある密かな活動にも配慮し、研究を進めていく必要があると感じました。

 

 

 

http://www.jneurosci.org/content/34/33/10798.short

 

Sagar R. Jilka, Gregory Scott, Timothy Ham, Alan Pickering, Valerie Bonnelle, Rodrigo M. Braga, Robert Leech, and David J. Sharp. Damage to the Salience Network and Interactions with the Default Mode Network. Journal of Neuroscience. 2014; 34 :10798 –10807.

 

 

 

 

 

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社会的評価を受けた際の腹内側前頭前野の活動の性差

 

 

他者から褒められたり貶されたりすると少なからず嬉しくなったり嫌な気持になったりすると思います.リハビリテーション場面でもセラピストがどのような声掛けをするかによって,対象者のモチベーションや機能回復の程度が変化するかもしれません.以前,「"褒められる""上手"になる」という論文を紹介しましたが,今回ご紹介する論文では,他者から褒められたり貶されたりした際の被験者の反応に性差が存在するか,functional MRIを用いて調べています.このような基礎研究のエビデンスが蓄積されていって,将来的には実際の臨床場面で,対象者を褒めることが治療効果に好影響を及ぼすか,どのように褒める(フィードバックを与える)のが良いのか検討をしていけたらと思います.

 

 

 

要旨

 

これまでの研究で,社会的評価は人の行動に大きな影響を与えることが知られている.社会的評価により生起される主観的な価値は腹内側前頭前野と呼ばれる領域で処理されていると考えられている.しかしながら,他者から社会的評価を受ける際に,腹内側前頭前野がどのようにその主観的な価値(ここちよさ)を処理しているかについては未だ不明な点が多い.我々は同性もしくは異性からの社会的評価を受けた際に,男性被験者と女性被験者それぞれの腹内側前頭前野がどのようにその主観的な価値(ここちよさ)を処理しているか検討した.行動データの解析から,ポジティブな評価はネガティブな評価よりもより心地よいと判断されることが明らかとなった.興味深いことに,男性では,同性からの社会的評価よりも異性からの社会的評価の方が影響が大きい一方で,女性では,異性からの社会的評価よりも同性からの社会的評価の方が影響が大きいことが明らかになった.腹内側前頭前野の活動は主観的な価値(ここちよさ)の上昇に伴って増加した.また,この腹内側前頭前野の活動パターンは,行動レベルで確認された性差のパターンと一致した.これらの結果は,腹内側前頭前野がポジティブな社会的評価の処理に関わっており,価値情報に基づいた意思決定における最終経路である可能性を示唆している.

 

 

 

 

 

元論文

 

Iori Kawasaki, Ayahito Ito, Toshikatsu Fujii, Aya Ueno, Kazuki Yoshida, Shinya Sakai,

 

Shunji Mugikura, Shoki Takahashi, Etsuro Mori

 

Differential activation of the ventromedial prefrontal cortex between male and female givers of

 

social reputation

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26235682

 

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注意機能と記憶に対する内発的、外発的動機づけの効果

 

 

 Motivationが神経心理学的検査に大きな影響を与えていることはよく知られています。この研究は動機づけの個人差や条件差によって、注意、記憶課題の成績にどのように影響するのかを検討した論文です。

 

 40名の健常被験者はAttention network taskANT)、とNewcastle spatial memory testNSMT)で評価されました。Base lineとして各課題の評価実施後、被験者はMotivationの条件を変えるために、①課題成績によって、2030ポンドの範囲で報酬額が変わる条件と②課題成績にかかわらず25ポンドの報酬をもらえる条件とにランダムに割り付けられました。各条件間で課題成績を比較したところ、①条件のMotivated群は②条件の対照群に比して、NSMTANTの成績が向上し、特にANT課題のalert(覚醒)の成績が向上し、ターゲットと不一致の妨害刺激の影響を受けにくくなっていました。また内発的動機づけを測定する尺度(Intrinsic motivation inventoryIMI)の下位因子であるenjoyment / interestの得点とNSMT課題のerrorの間には負の相関が確認されました(つまりenjoyment / interestの因子得点が高ければエラーが下がる)。以上より、動機づけの個人差、条件差は注意、記憶の神経心理学的検査の成績に影響を与えることが確認されました。筆者らは限界として内発的動機づけと、外発的動機づけの分離ができなかったことを挙げています。

 

 

 

※内発的動機づけ:課題を行うこと自体が楽しいなど、個人の好奇心や関心によってもたらされる動機づけ

 

※外発的動機づけ:お金をもらえるからやる、などの外的な賞罰や義務などによって生じる動機づけ

 

Attention network taskANT):真ん中の矢印がどちらの方向を向いているのか、周りの刺激に惑わされずに判断する課題

 

Newcastle spatial memory testNSMT):カップの中にものを隠し探索させる課題。同じカップを開けた回数や非効率的な探索がエラーとしてカウントされる。

 

 

 

Lucy J. Robinson, Lucy H. Stevens, Christopher J.D. Threapleton, Jurgita Vainiute, R. Hamish McAllister-Williams, Peter Gallagher. Effects of intrinsic and extrinsic motivation on attention and memory. Acta Psychologica 141 (2012) 243–249.

 

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外傷性脳損傷患者の自己認識とエラー認識の関連

 

 

外傷性脳損傷患者のリハビリテーション場面において、患者の自分の障害に対する主観的評価とセラピストを含めた他者による客観的評価が乖離することはよく経験される事だと思います。今回は外傷性脳損傷患者における障害の自己認識と課題のエラー認識との関連、また障害の自己認識やエラー認識が遂行機能障害を予測し得るか調査した論文をご紹介します。

 

<対象と方法>

 

62名の外傷性脳損傷患者(男性49名、女性13名、平均年齢34.37±11.85)を対象に、意識障害評価(PTAGCS)、脳損傷の障害部位、BADSの修正6要素テスト、NART(発症前のIQ推定)EAT(GO/NO-GO task)の成績を調査した。また患者の障害の自己認識と身近な他者(23名、配偶者18名、兄弟10名、友人2名、子供1名、いとこ1)による客観的評価としてCFQFrSBePCRSDARTが実施された。患者群の神経心理学的所見について健常者サンプルと比較した。また前頭葉損傷群と非前頭葉損傷群の認識を比較するため患者と身近な他者の質問紙の結果を比較した。さらにBADSの修正6要素テストの成績を予測し得る変数を抽出するため回帰分析を行った。

 

<結果>

 

対象の神経心理学的特性において、患者群の受傷前IQは健常群(n=216)と同程度であったが、年齢については健常群より若干若かった。独立サンプルのT検定では、BADSの修正6要素テストにおいて患者群が健常群よりも有意に低得点であった(p<0.01)

 

主観的評価と客観的評価の差の検討において、主観的評価と比較して客観的評価では認知機能障害の程度は有意に高く(p<0.0001)、前頭葉機能障害の程度は有意に高く(p<0.05)ADL能力は有意に低かった(p<0.0001)

 

主観的および客観的評価と認知機能評価との関連では、CEQFrSBePCRSの主観的/客観的評価と持続性注意の評価であるSARTの成績との関連の調査において、患者の主観的評価とSART成績には全て相関を認めず、CFQの客観的評価とSARTとの間に正の相関を認めた。

 

 主観的評価と客観的評価との差とエラー認識との関連ではCFQFrSBePCRSにおける主観的評価と客観的評価の差はそれぞれ内部相関を認め、エラー認識のタスクと主観的評価と客観的評価の差の評価との間で全てに相関を認めた。

 

損傷部位と障害認識との関連では、前頭葉損傷群26名と非前頭葉損傷群29名の比較では、主観的評価と客観的評価の差において前頭葉損傷群で大きい傾向を認めた。

 

遂行機能を予測する変数の検討では、全ての障害認識、注意の評価とBADSの修正6要素成テストの成績との比較において、主観的評価と客観的評価の差とエラー認識の成績が、修正6要素テストの成績と相関を認め、回帰分析ではエラー認識の成績が修正6要素テスト成績を予測する上で重要な因子として抽出された。

 

<考察>

 

外傷性脳損傷後のエラー認識の障害は、メタ認知の障害と関連し、遂行機能に関する行動を予測する可能性が示唆された。

 

 

 

 

 

Connecting Self-Awareness and Error-Awareness in Patients with Traumatic Brain Injury.

 

Paul M. Dockreea, Yvonne M. Tarletona, Simone Cartona, and Mary C.C. FitzGeralda

 

Journal of the International Neurorpsychological Society(2015),21,1-10

 

http://journals.cambridge.org/download.php?file=%2FINS%2FS1355617715000594a.pdf&code=8e502c50b7d6aa64a22b52fd9ff5084a

 

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パーキンソン病における視床下核-脳深部刺激療法(STN-DBS)術後早期の言葉流暢性課題成績が認知機能の長期的なアウトカムを予測するか

 

 

 

 

近年,STN-DBSは運動機能障害を有する早期のパーキンソン病患者のQOLを高めることが示されており,早期のSTN-DBS施行が推奨されています.またパーキンソン病におけるSTN-DBS後の早期の言語流暢性低下と実行機能の低下は,視床下核への電気刺激に伴う認知機能の微細な障害が関連する可能性が示唆されていますが,STN-DBS術後の認知機能低下の特徴や経過について一定の見解は得られていません.今回はパーキンソン病におけるSTN-DBS術後早期の言葉流暢性課題成績が,長期的なアウトカムを予測するのか検討した論文をご紹介します.

 

 

 

<対象と方法>

 

24(平均年齢63.5 ± 9.5 ,平均罹患期間12 ± 5.8)のパーキンソン病患者を対象とし,意味的及び音韻性言語流暢性課題を含む神経心理学的検査をSTN-DBS術前,術後3日,術後3か月,術後6か月に施行した.

 

<結果>

 

術後急性期の言語流暢性課題成績は、意味的言語流暢性課題44.4 ± 28.2%,音韻性言語流暢性課題34.3 ± 33.4%であり,両者とも術前の水準と比較して有意な低下を認め(P0.05),その低下は6か月続いた.回帰分析では術後急性期の音韻的言語流暢性課題成績が,6か月後の音韻性言語流暢性低下の独立因子として示された.対象の年齢は,認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の唯一の予測的な独立因子であった(P0.03)

 

<結論>

 

術後急性期の音韻性言語流暢性低下は長期的な音韻性言語流暢性低下を予測する可能性が示唆された.

 

 

 

Does early verbal fluency decline after STN implantation predict long term cognitive outcome after STN-DBS in Parkinson’s disease?

 

Alaina Borden,David Walon,Romain Lefaucheur,Stephane Derrey,Damien Fetter,Marc Verin,David Maltete

 

Jounal of the Neurological Science 346(2014)299-302

 

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022510X14005097

 

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価値観の変化に対する錯覚-歴史の終わり幻想-

 

 

皆さんはTED Talkをご存知でしょうか?今日ご紹介する研究はどんな人にも当てはまるであろう価値観の変化について調べた研究です.この研究は2013年にScienceに発表されたものですが,ハーバード大学の心理学者である著者がTED Talkでプレゼンを行っています.非常にわかりやすいので是非ご覧ください.

 

 

 

要旨

 

我々は19,000人以上の18-68歳の人々を対象に,パーソナリティや価値観,好みが過去10年でどれくらい変わったか,そしてそれらが今後10年でどれくらい変わると思うか質問しました.

 

全ての年代で過去10年の間に起こった変化は大きいものであったと報告されました.一方で,これから先10年の変化はそれよりも小さいだろうと報告されました.しかしながら,この将来に対する予測は実際の変化よりもずっと小さなものでした.すなわち,人々は“現在の自分”は将来まで続くと考える傾向がありますが,実はこれから先も想像以上に大きく変わり続けていくものであり,“将来の自分”は人々が想像するよりもはるかに現在と違うことが明らかになりました.

 

 

 

TED Talk

 

https://www.ted.com/talks/dan_gilbert_you_are_always_changing?language=en

 

 

 

元論文

 

Jordi Quoidbach, Daniel T. Gilbert, Timothy D. Wilson

 

The End of History Illusion

 

http://www.sciencemag.org/content/339/6115/96

 

 

 

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日常生活の行動上の無視の神経解剖学と心理学的検査との関連

 

 

 

右半球損傷見られる半側空間無視に関する研究です.机上の検査と日常生活上の行動障害との結果が一致しないことも多々あります.机上検査ができないリ重症例であれば起居動作から獲得から色々と苦労しますし,机上課題が改善しても着替えなどのセルフケアに汎化できないなど良くみかける高次脳機能障害ではありますが,介入方法が難しい症状の1つでもあります.今回,行動上の無視と机上検査上の無視の関係を神経解剖学的に調査した研究を紹介します.

 

 

 

要旨:空間無視の神経基盤としては,皮質(主に側頭頭頂接合部)と皮質下(主に上従束)が挙げられている.本研究の目的は,ADLにおける行動上の無視(N-ADLs)の神経解剖学的解明と無視のコンポ-ネント(身体周辺への無視:peripersonal neglectと身体への無視:personal neglect)と病態失認(anosognosia)の神経解剖学と心理学的検査との関連を明らかにすることである.脳卒中発症1か月以内の45名の無視がある対象者の行動上の無視の問題(N-ADLs)は,the Catherine Bergrgo ScaleCBS)にて評価をし,無視のコンポーネントの分類には,身体周辺への無視の検出に「線分抹消試験」と「対象抹消試験(the bell test)」を使用し,身体への無視の検出には,「健側で患側手までリーチする課題」と「主観的な正中を評価するsubjective straight-ahead (SSA)」を使用した.「身体周辺への無視」,「身体への無視」とも2つの検査のうち1つがカットオフ以下であったとき陽性とした.脳損傷領域の同定にVoxel-based lesion-symptom mappingを使用した.結果,“行動上の無視の問題”は,上側頭回の後方から側頭頭頂接合部,上従束を含む皮質下への広がりの損傷領域と関連を示した.“身体周辺への無視”は,上側頭回と下頭頂回の皮質領域から皮質下の損傷領域と関連を示した.“身体への無視”は,主に体性感覚皮質の損傷領域と関連しており,上側頭回損傷は重要でなかった.病態失認は,下側頭回と上側頭回の後方領域の損傷と関連していた.結論として“行動上の無視の問題”は,上側頭回と上従束損傷が主要な原因領域であること解明された.“行動上の無視の問題”は,“身体への無視”や“病態否認”よりも“身体周辺への無視”と関連していることも関連領域の同一性から明らかとなった.

 

 

 

 

 

    the Catherine Bergego ScaleCBS):生活障害を観察して評価するスケールであり,「左側の整容を忘れる」,「移動時の左側の衝突」,「左側の身の回りのものが探せない」などの項目に4件法で回答する.評価者の観察結果と対象者の自己評価の差異から病態失認を同定できる.

 

    健側で患側手までリーチする課題:開眼または閉眼で患側の身体の一部へリーチする課題で“躊躇することなく到達できる:0”から“目的に対して運動が見られない:3”でスコア化する.

 

    subjective straight-ahead (SSA):暗闇の中で光るロッドを体幹の正中に配置するように教示する.6回実施した客観的な体幹の正中とのずれの平均値を測定値とする.

 

 

 

 

 

Anatomical and psychometric relationships of behavioral neglect in daily living.

 

Rousseaux M, Allart E, Bernati T, Saj A.

 

Neuropsychologia. 2015 Apr;70:64-70.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25676676

 

 

 

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Computer-Assisted Cognitive rehabilitation of attention deficits for Multiple Sclerosis: A randomized Trial with fMRI correlates.

 

 

再発緩解型の多発性硬化症患者(MS)の4060%には注意、情報処理能力、学習、記憶などのなんらかの認知機能障害があると報告されています。この研究では認知機能障害(特に注意機能障害)を有するMS患者を対象に、PCを用いた訓練がどのような効果を示すのか、神経心理学的検査とfMRIを用いて検討しています。

 

対象者は再発緩解型のMS患者26名。主な認知機能の障害が注意、ワーキングメモリー、遂行機能、情報処理速度にある患者を対象としています。この患者を無作為にRehacomというPCを用いた介入を行う群(介入群)と、PCを使用するが、単に偶数にのみ反応を求めるという訓練課題を実施する群(コントロール群)とに割り付けます。1時間のセッションを1週間に2回、連続6週にわたって実施します。介入頻度は介入群、コントロール群ともに同じです。介入前後に神経心理学的検査(SRTSPARTSDMTPASATStroop testTMT-ABMMSE)、fMRI(タスクはPVSAT:視覚版のPASAT)の撮像を行い、介入前後と各群間の差を統計的に分析しています。

 

結果、介入後、群間で有意な差を示したのはStroop testで、介入後賦活領域に差があったのは、右の小脳、左上頭頂皮質でした。またStroop検査の成績は右小脳後部の賦活と相関していました。以上より、これまで不明確であったMS患者への認知機能への介入効果の有無が、神経心理学的検査、fMRIによる検討から、一定の効果があることを示すことができたと、筆者らは述べています。限界としてはこの研究の対象となっているMS患者が主に注意に障害のある患者に絞っている点が挙げられていますが、今後、注意以外の認知機能障害を有するMS患者に対する認知機能訓練の効果検証が期待されます。

 

 

 

SRT:言語学習と遅延再生課題

 

SPART:視空間性学習と遅延再生課題

 

 

 

Cerasa A, Gioia MC, Valentino P, Nistico R, Chiriaco C, Pirritano D, Tomaiuolo F,  Mangone G,Trotta M, Talarico T, Bilotti T, Quattrone A. (2012). Computer-Assisted Cognitive rehabilitation of attention deficits for Multiple Sclerosis: A randomized Trial with fMRI correlates. Neurorehabil Neural Repair 27: 284-295

 

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パーキンソン病における認知症の予測因子:前向きコホート研究

 

 

近年、パーキンソン病 (PD)における認知症 (PDD)の発症予測について盛んに研究が進められています。その背景には発症から10年以上経過する進行期のPD患者の少なくとも75%が認知症を発症するという高い発症率の問題があります (Aarsland and Kurz. 2010)。またPDDの発症に伴う精神症状の出現、QOL低下、死亡率や介護負担の増加など非常に多くの問題が指摘されているため、早期にPDDの発症を予測し、より適切な治療・介入

 

に繋げていくことが急務とされています。今回は、主にPDの非運動症状に注目し、どのような因子がPDDの予測に有用であるかを縦断的に検討した論文を紹介します。

 

 

 

〈要旨〉

 

【目的】パーキンソン病 (PD)における認知症の予測因子を調査した。

 

【方法】認知症のないPD患者80名を対象に自律神経系、睡眠、精神、視覚、嗅覚、運動症状の包括的な評価を施行した。4.4年後のフォローアップ時、認知症の評価が行われた。予測変数は罹病期間、フォローアップ期間、年齢、性別を調整したロジスティック回帰分析を用いて評価された。

 

【結果】PD患者80名のうち27(34%)が認知症に進行した。認知症に進行したPD患者らは高齢であり、多くが男性であった (オッズ比[OR] = 3.64, p = 0.023)。初回評価時に軽度認知機能障害 (MCI)のあったPD患者らは認知症への移行リスクが高かった (OR = 22.5, p < 0.001)。またREM睡眠行動障害のあった患者らは認知症のリスクが著しく高かった (OR = 49.7, p = 0.001)。しかし日中の眠気と不眠はどちらも認知症を予測しなかった。初回評価時に、より血圧が高かった患者は認知症のリスクが増加した (OR = 1.37/10 mmHg, p = 0.032)。また起立性低血圧が認知症のリスクと強く関係しており (OR = 1.84/10 mmHg, p < 0.001)、収縮期血圧が10mmHg以上低下するとそのリスクは7倍にもなった (OR = 7.3, p = 0.002)。色覚異常は認知症のリスクを高めたが (OR = 3.3, p = 0.014)、嗅覚障害では認められなかった。運動指標に関して、UPDRS-part3の歩行 (OR = 1.12, p = 0.023)、転倒 (OR = 3.02, p = 0.042)、すくみ足 (OR = 2.63, p = 0.013)、その他ペグボード (Purdue pegboard test)(OR = 0.67, p = 0.049)、タッピングテスト(Alternate tap test) (OR = 0.97, p = 0.033)が認知症を予測した。

 

【結論】心血管系自律神経障害、REM睡眠行動障害、色彩弁別能力、歩行障害がPDにおける認知症をより強く予測する。

 

 

 

この論文の研究グループは以前よりPDDRBDの関係性についてpolysomnograpy (睡眠ポリグラフ検査)のような生理指標を用いて精力的に研究を進めており、今回の研究結果も彼らの仮説を支持するものとなっています。しかし、PDDの予測に有用な因子については今回有用性が認められなかった因子を含め、脳画像の知見など様々報告されており議論の的になっています。作業療法場面においてPD患者の予後を検討する上でもこれらの知見は非常に重要になると思いますのでぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

Predictors of dementia in Parkinson disease: a prospective cohort study

 

Anang JBGagnon JFBertrand JARomenets SRLatreille VPanisset MMontplaisir JPostuma RB. Neurology. 2014.

 

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25171928

 

 

 

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成人もやもや病患者の認知機能

 

 

もやもや病患者の認知機能障害の特徴は明らかにされていません。今回紹介する論文は標準化された神経心理学的検査を用いて、社会的に自立したもやもや病患者と社会的自立が困難なもやもや病患者についての認知機能を調査した研究です。

 

対象は神経放射線学的な観点から確認された成人もやもや病患者10(男性3例、女性7例、平均年齢34.2)で、社会的自立群5例、社会的自立困難群5例の2群に分類した。神経心理学的評価としてWAIS-Ⅲ、WMS-RFABTMT-ABWCSTGo/No-Go taskNo-Go/Go taskApathy ScaleTheory of Mind (Eyes)を施行し、評価結果について、群間比較(t検定、マンホイットニーU検定)と判別分析を行った。統計解析にはJMP 10.0.2を使用し有意水準は全て5%未満とした。

 

自立群の平均年齢は自立困難群と比較して有意に高かったが(P0.05)、罹患期間に有意差は無かった。WAIS-Ⅲの各IQ・群指数のスコアは全ての項目において自立困難群と比較して自立群で有意に高かった(P0.01)WMS-Rの言語性記憶、視覚性記憶では有意差を認めなかったが、一般的記憶(P0.05)、注意/集中力(P0.01)、遅延再生(P0.05)で自立群が有意に高かった。TMT-B(P0.05)Theory of Mind(P0.01)で有意に自立群の成績が良好であった。

 

判別分析ではWAIS-Ⅲの作動記憶(P0.01)Theory of Mind(P0.05)が群間の判別に寄与する因子として抽出された。

 

先行研究では小児期のもやもや病発症例の知能の低下が証明されており、本研究における自立困難群の患者は小児期の発症であるため、それらの先行研究と一致した。自立群において、作業記憶のスコアは他項目と比較して低い傾向を示した。これは社会的自立に困難を呈さない成人もやもや病患者の特性を示唆するものと考える。血行力学的な障害により生じる脳血流量の低下もしくはニューロンの減少はWAIS-Ⅲの作動記憶の低下を引き起こす可能性がある。

 

自立困難群におけるWMS-R成績でSPECT所見で説明できない明らかな機能低下を示したことより、記憶機能が海馬などの側頭葉内側部領域だけでなく、広範囲の皮質下領域におけるニューロン結合と関連している可能性があり、この点は今後の検討課題である。

 

成人もやもや病患者でTMT-Bの成績が低下することが報告されており、本研究の自立困難群の結果はそれらの報告を支持する結果であった。Theory of mindは他者の精神状態を推論する能力であり、健常者や精神疾患を有する患者のニューロイメージング研究において、内側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、扁桃体、側頭極領域、上側頭溝の賦活との関連が示されている。脳における慢性的な前方循環不全は前頭前皮質の内側や外側領域の機能不全引き起こし、本研究の自立困難群の結果でみられたようにTheory of mind(他者の精神状態を推論/察する能力)の障害を引き起こす可能性がある。

 

もやもや病患者の神経認知の機能不全についてのより強いエビデンスを得るため多施設による前向き研究が必要である。

 

Cognitive Function of Patients with Adult Moyamoya Disease

 

Yoshio Araki, MD, PhD, Yasushi Takagi, MD, PhD, Keita Ueda, MD, PhD, Shiho Ubukata, MHSc, Junko Ishida, OTR, Takeshi Funaki, MD,Takayuki Kikuchi,MD, PhD,Jun C. Takahashi, MD, PhD, Toshiya Murai, MD, PhD,and Susumu Miyamoto, MD, PhD

 

Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases, Vol. 23, No. 7 (August), 2014: pp 1789-1794

 

http://www.strokejournal.org/article/S1052-3057(14)00222-5/abstract

 

 

 

 

 

 

 

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他者からの社会的評価に対する自閉症者の鈍感さ

 

 

自閉症は対人コミュニケーションの障害や著しい興味の限定に特徴づけられる広汎性発達障害です。近年では行動学的な検討だけでなく、脳画像を用いた研究も増えてきていますが、まだまだ解明されていないことがたくさん残されています。今回ご紹介する研究は、著者が以前に健常者を対象として行った実験*1を発展させて、自閉症のコミュニケーション障害のメカニズムの一端を明らかにしたものです。こういった研究は基礎研究と臨床研究の橋渡しの役目を果たすように思えて、個人的は増えていってほしいなと思うタイプの研究でした。

 

 

 

人は他人に自分が見られていると知っている時は、より向社会的に振る舞うことが知られている。他人に見られている時に観察されるこの効果は、自分の社会的な評価を上げたいという動機づけによって起こるものと考えられている。我々はこの効果が、自閉症者では選択的に障害されているのではないかという仮説を検証した。実際に寄付をするかどうか選択する課題を行うと、健常コントロール群では、他人から見られていない場合よりも、他人から見られている場合の方が多く寄付をした。一方、高機能自閉症の人たちにおいては、他人から見られているかどうかの影響は観察されなかった。しかしながら、持続処理課題*2continuous performance task)では両方のグループにおいて、他人から見られていない場合よりも、他人から見られている場合で成績の向上がみられた。これらの結果は、自閉症者が他人からどう思われているかを考慮する能力に欠けていることを示唆している。

 

 

 

*1興味のある方は、「Processing of the incentive for social approval in the ventral striatum during charitable donation(Izuma et al., 2010, Journal of Cognitive Neuroscience)も読んでみてください。

 

*2この課題では、様々なアルファベットが一つずつ200ミリ秒間呈示され、その文字が”X”であるかどうかを判断した。

 

 

 

Keise Izuma, Kenji Matsumoto, Colin F. Camerer, Ralph Adolphs

 

Insensitivity to social reputation in autism 2011

 

http://www.pnas.org/content/108/42/17302

 

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過誤再生は,腹内側前頭前皮質損傷によって減少する:スキーマメモリ(概要記憶)の神経基盤解明につながる

 

 

前交通動脈動脈瘤破裂によるくも膜下出血後の認知機能障害として,特有な記憶障害や作話が見られることを経験され,リハビリテーションを実施に苦慮されると思います.今回紹介する論文は,前交通動脈動脈瘤破裂によって損傷する腹内側前頭前皮質の損傷が,過誤再生を減少させるという一見臨床と矛盾する結果の研究を報告します.しかし,読み進めていくと過誤再生の減少が関連した認知障害と納得できるかと思います.

 

 

 

要旨:概念記憶や前に経験した出来事から派生される文脈的知識は,関連情報の学習速度や記憶の貯蔵の促進するため覚えることにとって有益である.しかしながら,概念記憶は,過誤再生の産出を促進することもある.Roediger and McDermottが1995年に報告した“The Deese-Roediger-McDermott (DRM) Paradigm: DMRパラダイム*”の過誤再生効果は,このスキーマメモリの実証のひとつといえる.我々は,腹内側前頭前皮質のような多彩な選択による複雑な意思決定処理に関連する前頭葉の領域が,概念知識による記憶の処理とも関連するという仮説を立案した.この仮説を検証するためにDMRパラダイムを用いた課題の過誤記憶におけるヒトの腹内側前頭前皮質の役割を調査した.腹内側前頭前皮質損傷者群(7名)と健常対照者群(14名)が,特定のアイテムによる共通項を含んでいる単語リストを学習,再生と再認のテストを実施した.結果,健常対象者群は,特定のアイテムによる共通項を含んでいる過誤再生や再認が予想通り高頻度でみられた.一方,腹内側前頭前皮質損傷者群では,明らかに特定のアイテムによる貫入がみられなく過誤再生の減少を示し,過誤再認も減少傾向を示した.我々の発見は,腹内側前頭前皮質が,概念的に相同な記憶の影響を増強させることを示唆しており,この寄与が,意思決定における腹内側前頭前皮質の役割と関連しているのかもしれない.

 

 

 

*DMRパラダイム:例えば,「寒い」,「吹雪」,「冬」…などを学習させると学習していない「雪」など共通した概要に分類される単語を学習したと誤って判断しやすくなること.

 

 

 

False Recall Is Reduced by Damage to the Ventromedial Prefrontal Cortex: Implications for Understanding the Neural Correlates of Schematic Memory

 

David E. Samuel H. Jones, Melissa C. Duff, and Daniel Tranel

 

J Neurosci. 2014 May 28; 34(22): 7677–7682.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4035527/

 

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Functional Electrical Therapy for Hemiparesis Alleviates Disability and Enhances Neuroplasticity

 

 

脳卒中後の後遺症として上肢の運動・感覚障害があり、永続的な障害として残る場合もある。機能的電気刺激(FES) は、麻痺肢の運動機能を改善させる方法として知られているが、そのメカニズムは知られていない。本研究では、20名の慢性期脳卒中患者(53±6歳、発症後年数2.4±2.0年)に対して本治療がもたらす改善において神経可塑性が関係しているかを検証した。今回、治療群(FES群)と従来の理学療法群(PT群)に分けた。両群共に2週間、1日2回上肢の治療を行った。評価は、手の行動運動機能評価と経頭蓋磁気刺激を用い、介入前、介入後、6ヶ月フォローアップ時に計測した。介入後にFES群で皮質脊髄の促通と新たな筋反応が麻痺側上肢にみられたが、PT群にはみられなかった。行動的にも、FES群では運動速度時間が早くなった。少人数で統制されていない被検者ではあったが、麻痺側の電気治療で増大した機能的な運動は、皮質脊髄の促通としてみられたように神経可塑性を促し、麻痺側運動コントロールを改善させる可能性がある。

 

 

 

 私も実際の現場で使っているが、慢性期患者においても、ある程度の効果は2週間程度でみられており、Br-stageII程度に最も有効的であると感じられるが、ADLに汎化されるまでには至っていない。そのため、長期的に継続していき、経過を追っていきたい。

 

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21878747

 

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発達性相貌失認において顔の全体(処理)的な訓練が顔の処理を高める

 

 

相貌失認は、先天性(発達性)と脳損傷等により生じる後天性があります。後天性は非常に稀であるため、臨床現場ではなかなか経験することはないと思います。一方、先天性の相貌失認は、本人、周囲が気づいていないだけで意外と身近にいることが最近話題となっています。今回ご紹介するのは先天性の相貌失認患者らの顔認知に対する訓練で効果が得られたという研究論文です。今回はあくまで先天性の相貌失認患者を対象としており、後天的な相貌失認患者に対しては検証が行われていません。

 

 

 

要旨

 

これまで相貌失認は治療困難な障害と考えられてきた。しかし、認知訓練を用いた近年の症例報告では発達性の相貌失認患者で顔認知の能力を高める可能性があることが示されてきた。そこでこの研究の目標は、過去に著者らが考案した訓練方法が発達性の相貌失認患者群に効果的かどうか確かめることであった。この研究では24名の発達性相貌失認患者に対して、顔の全体処理*を標的とする3週間の継続的な顔に関連した訓練プログラム*を実施した。24名のうち12名の発達性相貌失認患者は訓練プログラムの前後を評価され、残りの12名は待機期間 (同時期に訓練プログラムを実施しない)の前後を評価されたのち訓練を行い、その後評価された。評価指標は既存の評価バッテリーの中に含まれている正面顔の識別、視点が変化した顔の識別、顔の全体処理、実生活での改善を定量化するための5日間の日記とした。待機期間があった群に比べ、訓練プログラムを実施した群では中等度であったが正面顔の識別課題で有意な訓練効果を認めた。さらにより難易度の高い訓練プログラムまで実施できた患者群では正面顔の識別課題で最も強い効果を認め、顔の全体処理課題では訓練を行っていない健常対照群と同様の成績にまで改善した。また患者の主観的な評価となる日記での発達性相貌失認患者の日々の顔認知能力と潜在的なバイアスを特徴づける取り組みにおいても、中等度であれ一貫した改善効果を認めた。

 

 

 

*顔の全体処理:目鼻口といったそれぞれの部分の特徴ではなく、それぞれの配置で見るという処理方略。

 

*訓練プログラム:眉の位置が高く、口の位置が低い顔刺激 (カテゴリー1)とその逆の条件の顔刺激 (カテゴリー2)が呈示され、どちらのカテゴリーか早く正確に答える。繰り返し施行され、その成績によって訓練の難易度が上がる。難易度は高くなるにつれ、サイズが異なる顔刺激が含まれるようになる。

 

 

 

Holistic face training enhances face processing in developmental prosopagnosia

 

DeGutis J, Cohan S, Nakayama K. Brain. 2014.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24691394

 

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脳卒中後の認知機能障害に対するMMSEはどの程度予測に有効であるか

Mini-Mental State ExaminationMMSE)は認知機能を簡便に測定できる世界中で最も広く用いられている検査です.MMSEから得られる情報をどのように解釈し,また有効利用するかについての示唆は脳卒中の臨床において大変に貴重なものであると思います.今回は①脳卒中急性期においてMMSEが軽度,中等度の認知機能障害を検出するのに有効な評価であるのか,また②その後の認知機能の予測に貢献する評価であるのかを他の認知ドメインを抽出する神経心理学的検査を用いて検証した研究を紹介します.

 

 

対象:40歳以上の初発の脳卒中患者140例(MMSE score >15

 

   更にMMSE2424MMSE27MMSE273つにグループ分けがなされた.

 

方法:発症後1,6,12,24ヵ月に以下の神経心理学的検査を受けた .検査結果が年齢平均スコアを10%以上下回った場合は認知ドメインの障害ありと定義された.

 

神経心理学的検査と認知ドメイン     *( )内は認知ドメイン

 

®  MMSE

 

®  CAMCOG(見当識,注意,行為,reasoning,言語)

 

®  Concept Shifting Test(情報処理スピード)

 

®  Stroop Colour Word Test(情報処理スピード,executive function

 

®  Auditory Verbal Learning test(記憶)

 

®  Groninger Intelligence Test (計算,視空間)

 

Follow-up時の認知機能の変化は障害された認知ドメインの数で「改善」,もしくは「悪化」と定義された.①については初期評価のMMSE score ― フォローアップのMMSE scoreの相関,初期評価のMMSE score ― 障害された認知ドメインの数の相関,②については初期評価のMMSE ―Follow-up時のMMSE,初期評価のMMSE ―Follow-up時の認知機能(神経心理学的検査の成績)の回帰分析が用いられ,更に副次的にMMSEcut-off scoreを確認するためReceiver Operating Characteristics (ROC) 曲線が用いられた.

 

結果:12ヵ月後,24ヵ月後共に初期のMMSE24のグループは他のグループよりfollow-up時に「悪化」の比率が有意に高くなった.MMSE242グループは有意差なし.初期評価時 MMSEfollow-up時の「悪化」,「改善」の比率に相関あり (6ヵ月:r=0.7712ヵ月:r=0.7624ヵ月:r=0.77).

 

MMSE24のグループにおいて4つ以上の認知ドメインの障害がある場合はfollow-up時に障害された認知ドメインの数が減少した.1つ以下の認知ドメインの障害がある場合は, MMSE24のグループは「悪化」の割合が増加した(Table 4).ROC曲線では感度(0.710.83),特異度(0.720.96)で障害された認知ドメインの数が少ない場合(認知障害が軽度である)ほど感度,特異度が共に低かった(Fig. 1).follow-up時の障害された認知ドメインの数を従属変数としたロジスティック回帰分析では有意な値を示した(p<0.05R2, オッズ比については記載なし).初期評価時およびフォローアップ時の障害された認知ドメインの数を予測に有効である.認知機能障害の抽出には優れているが,相対的に軽度であればあるほど鋭敏性は低くなる.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論:急性期脳卒中のMMSE scoreは初期評価時およびフォローアップ時の障害された認知ドメインの数を予測に有効であるが,相対的に認知機能障害が軽度であればあるほどその鋭敏性は低くなる.

 

初期評価時のMMSE low scoreの場合は認知機能が悪化する傾向があり,比較的MMSE high scoreの場合が障害された認知ドメインの数が少ないほど認知機能が悪化する傾向あり.

 

 

 

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認知機能の予後予測は臨床場面において非常に悩ましい問題となることがあります.簡便かつ広く普及しているMMSEから大まかにでも予後の傾向を把握できれば日々の臨床に有意義な情報となるのではないでしょうか.また認知機能障害が軽度であればあるほどその鋭敏性が低いことからもMMSEのみで認知機能を把握するのは困難であり,特に就学,就業を目的に置く対象者には各認知ドメインにおいて更に難易度の高い検査を実施する必要があること,認知ドメイン初期評価時のMMSE low scoreの場合は認知機能が悪化する傾向があることからは退院後のフォローアップには十分な配慮が必要であることも示唆されたように思いました.

 

 

 

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20361295

 

Bour A, Rasquin S, Boreas A, Limburg M, Verhey F. How predictive is the MMSE for cognitive performance after stroke? Journal of Neurology. 2010; 257: 630-637.

 

 

 

 

 

 

 

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運動学習時の金銭的報酬は運動の長期保持を向上させる

 

動物においても人においても、良いパフォーマンスには報酬を、悪いパフォーマンスには罰を与えることによって、短期的にパフォーマンスが向上することが知られている。しかし、報酬や罰を与えることが、学習効果を長期間保持することに貢献するかどうかは、まだよく知られていない。我々は38名の健常被験者に対し、Tracking pinch force task*を用いて、報酬と罰が運動学習の長期保持に与える影響を検討した。我々は課題成績が良ければ金銭が与えられる群、課題成績が悪ければ罰金が与えられる群、課題の成績にかかわらずなにもされない群の3群に被験者を分けた。Tracking pinch force taskの運動学習の訓練直後、6時間後、24時間後、30日後に、再度同様の課題を行い、課題成績を比較した。結果、訓練後6時間後から金銭報酬を与えられた群とその他の群との間に有意差が認められ、この差が24時間後、30日後と期間を置くごとに開いていった。つまり、何も与えられない群、罰を受けた群は運動学習課題の成績が日を重ねるごとに低下したにも関わらず、報酬を与えられながら運動学習した群は日数の経過による成績低下が小さかった。以上より、運動学習課題において報酬が与えることによって、より効果的に運動学習が起こることが示唆された。

*画面に上下運動するマーカーが提示され、強くピンチ(つまむ)すると上に動き、力を弱めると下にマーカーが動く。このマーカーを、上下するターゲットと一致するように追従させる課題。課題成績はこのターゲットとマーカーの誤差によってあらわされた。

 

Abe M, Schambra H, Wassermann EM, Luckenbaugh D, Schweighofer N, Cohen LG. (2011). Reward improves long term retention of a motor memory through induction of offline memory gains. Current Biology, 21, 557-562.

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脳卒中患者の認知機能障害に対する作業療法

 

 皆さんおそらく読まれたことがあるとは思いますが、今回は自分の所属する病院での文献抄読会で紹介させて頂いたCochrane reviewをご紹介致します。得られた結果自体はあまり重要では無いとは思いますが、認知機能障害に対する作業療法の現状を如実に反映した内容ではないかと思います。

 

BACKGROUND

作業療法は認知機能障害の治療アプローチで重要でかつユニークな役割を担っている。作業療法士が認知機能障害の治療として取り得る方法は2つに大別され、治療的アプローチと代償的アプローチがある。脳の可塑性の概念に基づいて、ダメージを受けた脳を再構成し、特定の認知ドメインのトレーニングをすることで患者の機能を高めていくのが治療的アプローチである。代償的アプローチは患者の残存した力を用いることで、低下した機能を補填するものである。作業療法が脳血管疾患の認知機能障害にどのような効果があるのかをまとめたシステマティックレビューは存在しない。

METHODS

 RCTでグループ分けが厳格に行われている研究を採用。また脳血管疾患での認知機能障害のOT介入全てを含めた。治療的アプローチでは上やペン、コンピューター、ボードゲームなどを用いた特定の認知機能障害に焦点を当てた治療法があった。代償的アプローチではADLなどで補助具(アラーム、時計、hand-held computerなど)の使い方を教えるなどがある。動的相互アプローチdynamic interactional approachは治療的・代償的アプローチを融合した「第三のアプローチ」で、院内での環境にて実生活の遂行環境をなるべく実現し、治療効果を引き出す手法である。(注釈:環境をセッティングして模倣訓練などがそれに当たるか?)こうした3タイプに文献を分けて検討する(予定だった)。

RESULTS

1639文献が該当したが、たった1文献しか該当しなかった(Carter, 1983)。この文献はRCTで急性期の33名の患者に対し認知機能の治療的アプローチを実施しその効果を検討したものである。Thinking Skills WorkbookCarter, 1980)に基づいたトレーニングである(出版された本もあるが・・・)。視覚走査や視空間マッチング、時間判断(Time judgment)などが効果指標である。ADLの指標はBIを用いていた。しかし、単一文献であったため、これ以上の検討はできなかった。

ちなみに他の文献は「ほとんどがRCTではない」という理由で除外された。

DISCUSSION and CONCLUSIONS

 今回、脳血管疾患後の認知機能障害へのOTの効果について検討しようとしたが、基準に見合うRCT論文が1つしか見あたらず、それ以上の分析は不可能であった。見つかった単一文献では、時間判断による認知機能とADLBI)は治療群とコントロール群で差がなかったとされている。しかし33名という患者の少なさから、より詳細な検討が必要であると考えられる。今後、脳血管疾患後の認知機能障害に対するOTの有用性はRCTなど方法論的に厳しく統制された上で検討されることが必要である。

 

 

上述の通り、このリサーチの結果自体には大きな意味は無いとは思います。しかし認知機能と作業療法に関したRCTの論文が殆ど無いということを明確に示した内容だと思います。論文の抽出方法などは今回省略しましたが、やはり認知機能障害に対してエビデンスの高い治療方法があるとは言い難い現状があるのではないでしょうか。注意機能、認知機能、その他の認知ドメインに対して何らかのRCTの研究ができればな・・・と個人的に思っております。

 

今回は時間の都合上、簡易的な論文要約になってしまいました。申し訳ございません。次回はもう少し実のある内容にできればと思いますので、今回はご容赦頂ければ幸いです。

 

Hoffmann T, Bennett S, Koh CL, and McKenna KT, Occupational therapy for cognitive impairment in stroke patients, The Cochrane Library 2010, Issue 9

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一過性脳虚血発作型小児もやもや病患者の神経心理学的機能の障害パターン

 

もやもや病は内頚動脈が両側性・進行性に狭窄する疾患として特徴付けられ,神経心理学的機能の障害は前頭側頭葉領域の関与が大きいと言われています.今回は一過性脳虚血発作型のもやもや病と診断された子供の神経心理学的機能の障害パターンを調査した研究を紹介します.

 

論文タイトル「Selective neuropsychological impairments and related clinical factors in children with moyamoya disease of the transient ischemic attack type

 

対象:一過性脳虚血発作型のもやもや病と診断された未手術の小児13(平均年齢:13.9±6.3歳,発症年齢平均:10.2±3.6歳,発症後期間平均:17.0±15.9ヶ月)

方法:神経心理学的検査としてWISC-Ⅳ,WMS-Rの言語性対連合,カテゴリー流暢性検査(CFT)Judgment of line orientation(JOL)を施行し標準化サンプルと比較した.

結果:言語性対連合の即時再生と遅延再生,WISC-Ⅳの処理速度,CFTで有意な低下を認め,因子間の相関関係では症状持続期間と処理速度,発症年齢と言語性対連合の即時再生,年齢と言語性対連合の遅延再生,発症年齢と言語性対連合の遅延再生で強い相関を認めた.

考察:小児もやもや病患者の言語性記憶における想起のプロセスの問題と処理速度の低下,ワーキングメモリや知覚推論の機能が保たれる傾向,また小児もやもや病に対する早期発見と早期治療介入の重要性が示唆された.

 

Yen-Hsuan Hsu & Meng-Fai Kuo & Mau-Sun Hua & Chi-Cheng Yang Childs Nerv Syst .2014:30:441–447.

 

http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00381-013-2271-9

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リアルタイムfMRIを用いた注意力のトレーニング

 

ここ最近の飛躍的な解析技術の進歩により、自分の脳活動をリアルタイムに観察することが可能になってきました。この技術は今後、医療場面でも多用されていくことになると思います。今回ご紹介する研究は、この技術を使って人の注意力を高められるか検討したものです。

 

 

注意力が落ちると、アクシデントに見舞われたり生産性が下がることがあります。プリンストン大学の研究グループは、注意力の維持能力を高めて注意力が低下する頻度を少なくするために、被験者自身の脳活動によって課題の難しさがリアルタイムに変化する課題を用いて研究を行いました。

 

参加者は男女どちらかの顔と屋外もしくは屋内の風景の半透明の写真が重ねられた複数の要素からなる画像を連続して呈示されました。被験者はその際、画面に呈示された指示に従ってボタン押しをするように求められました。例えば、“屋内“という文字が呈示された場合は、まず顔ではなく風景の写真の方に注目しなければいけません。更に、屋内の写真が呈示されている時にはボタンを押し、屋外の写真が呈示されている時にはボタンを押さないように教示をされました。

 

その結果、後頭・側頭葉の知覚に関わるネットワークの活動の情報よりも、前頭・頭頂葉の注意に関わるネットワークの活動の情報がリアルタイムにフィードバックされた際に、注意力が最も向上することが明らかになりました。これらの知見は注意力の低下が認知的能力の限界によるものではないこと、脳活動に基づいた適切なフィードバックによって注意力が鍛えられうることを示唆しています。

 

Megan T deBettencourt, Jonathan D Cohen, Ray F Lee, Kenneth A Norman, Nicholas B Turk-Browne

Closed-loop training of attention with real-time brain imaging. 2015

http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/abs/nn.3940.html

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Mirror therapy in unilateral neglect after stroke (Must trial): a randomized control

脳卒中患者に対する治療法の一つとして、一側上肢を動かしながら鏡に映った手を見るというミラーセラピーがあります。通常は患側の前に鏡を置いて鏡に映った健側を見るというもので、半側空間無視を呈する患者だと、その動きを認識しているかどうか統率がとれないため、除外基準となっていました。

しかし、今回はその除外基準とされていた半側空間無視患者にミラーセラピーを行った報告です。

 

題名「Mirror therapy in unilateral neglect after stroke (Must trial): a randomized control

目的:脳卒中後半側空間無視患者におけるミラーセラピー(以下MT)の効果検証。

方法:脳卒中後48時間以内に半側空間無視を発症した視床、頭頂葉損傷患者を対象とした。MT群とコントロール群にランダムに分けた。介入期間は4週間とし、週5日、1日1〜2時間介入した。主効果は星抹消試験、線分二等分試験、写真同定試験とし、ブラインドされた評価者が1、3、6ヶ月目に実施した。

結果:48名(MT群27名、コントロール群21名)が参加した。6ヶ月評価において星抹消試験、線分二等分試験、写真同定試験で有意に改善した。

考察:脳卒中患者において、MTは半側空間無視を改善させる簡単な方法である。

 

この研究では、MTでなくてはならなかったのかが疑問になります。コントロール群は鏡の代わりに木の板を見ていたのですが、鏡を通して健側の動きを見ることがいいのか、単に患側への注視が効果を及ぼしたのかどうか不明です。今後を期待出来る論文でした。

 

Mirror therapy in unilateral neglect after stroke (Must trial): a randomized control

Jeyaraj D. Pandian, Rajni Arora, Paramdeep Kaur, Deepika Sharma, Dheeraj K. Vishwambaran, Hisatomi Arima.

Neurology 2014: 9; 83 (11): 1012-7

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25107877

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共感の2つのシステムは,異なる神経基盤から成り立っている

 

 

 

一昔前に“KY”ということばが流行し,その後,“鈍感力”も必要と共感には,2つのシステムがあることはいわれていましたが,その2つが異なる神経基盤にて成立しているのかどうか,議論の余地がありました.病巣の重ね方などは脳機能画像の技術を使っていますが,その疑問を神経心理学で行われてきている二重解離(Teuber1955が唱えた原則:神経心理学入門より引用)にて証明したシンプルな研究デザインの研究を紹介します.

 

 

 

題名「共感の2つのシステム:下前頭回と腹内側前頭前野損傷における情動と認知の共感の二重解離」

 

 

 

要旨

 

近年,共感のシステムは,基本的な感情の伝播と認知的な推察力からなるシステムの2つのシステムが考えられている.本研究では,基本的な感情の伝播と認知的な推察力からなるシステムの神経基盤が解離しているという仮説を検証する.対象は,腹内側前頭前野損傷群と下前頭回損傷群と脳損傷対照群(前頭葉以外の損傷)と健常対照群に対して,情動再認課題(52枚の目の写真に2つの情動を表す単語が書いてあり,写真に適した単語を選択させる課題)と心の理論課題(2次誤信念課題:「Aさんがある物をしまって部屋を出て行く.Bさんは,Aさんが部屋にいない間にその物を別の場所に移す.しかし,Aさんは,陰でBさんがしていたことをこっそり見ているが,Bさんは,そのことを知らない.」対象者に「Bさんは,Aさんが考えていることに関して知っているかどうか」を判断させる.)結果,情動再認課題成績において下前頭回損傷群は,2つの対象群と比較して有意に低下していたが,腹内側前頭前野損傷群は対照群と差がなかった.一方,心の理論課題成績は,腹内側前頭前野損傷群が,他の3群と比較して明らかに低下していたが,下前頭回損傷群は2つの対照群と差が検出されなかった.病巣と課題成績の関係では,ブロードマン44野が感情の伝播と関連し,ブロードマン1110野と認知的な推察力と関連していた.

 

 

 

リハビリテーションにおいて対象者の行動異常を検討すると複数の要因が挙がってきます.その時に,二重解離の手法を応用できると整理されやすいかも知れません.

 

 

 

Two systems for empathy: a double dissociation between emotional and cognitive empathy in inferior frontal gyrus versus ventromedial prefrontal lesions.

 

Shamay-Tsoory SG, Aharon-Peretz J, Perry D.

 

Brain 2009132617-627

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18971202

 

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"褒められる"と"上手"になる

 

他者から褒められることは、脳内で金銭を受け取る時と同じような仕組みつまり報酬としてで処理されていることが明らかにされています (Izuma et al., 2008, Neuron)。今回ご紹介する研究は、他者から褒められると課題に対するパフォーマンスが高まるというものです。下記のリンクに分かりやすく研究内容がまとめられたプレスリリースが掲載されています。今回の要約は原著論文のabstractではなくプレスリリースの内容から抜粋してみました。

http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2012/11/post-223.html

 

プレスリリース(一部抜粋)

実験では、48人の成人にトレーニングを行い、ある連続的な指の動かし方(30秒間のうちにキーボードのキーをある順番に出来るだけ早く叩く)を覚えてもらいました。そして、この指運動トレーニングをしてもらった直後に、被験者を3つのグループにわけ、褒められ実験をしました。ある人は自分が評価者から褒められるグループ、別の人は他人が評価者から褒められるのを見るグループ、さらに別の人は自分の成績だけをグラフで見るグループの3つのグループです。すると、自分が評価者から褒められたグループは、次の日に覚えたことを思いだして再度指を動かしてもらうときに、他のグループに比べて、より上手に指運動が出来ることがわかりました。運動トレーニングの直後に褒められることが、その後の運動技能の習得を促したことがわかります。

 

定藤教授は「褒められるということは、脳にとっては金銭的報酬にも匹敵する社会的報酬であると言えます。運動トレーニングをした後、この社会的報酬を得ることによって、運動技能の取得をより上手に促すことを科学的に証明できました。褒めて伸ばすという標語に科学的妥当性を提示するもので、教育やリハビリテーションにおいて、より簡便で効果的な褒めの方略につながる可能性があります」と話しています。

 

Sho K. Sugawara, Satoshi Tanaka, Shuntaro Okazaki, Katsumi Watanabe, Norihiro Sadato Social Rewards Enhance Offline Improvements in Motor Skill. 2012; 7 (11): e48174. doi: 10.1371/journal.pone.0048174. Epub 2012 Nov 7.

 

*オープンアクセスジャーナルですので、どなたでもPDFをダウンロードできます。

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0048174

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アンダーマイニング効果の神経基盤

リハビリテーションや教育に限らず、人の行動や意思決定において動機づけは重要な役割を持っています。今回ご紹介する研究では、外発的な動機づけと内発的な動機づけの関連が検討されています。どちらもパフォーマンスの維持・向上には重要かもしれませんが、外発的な動機づけは、内発的な動機づけを弱めてしまう場合があるようです。

 

要約

人は報酬によって動機づけられると広く信じられている。一方で、一部の研究はある課題のパフォーマンスに基づいた外発的な報酬が、その課題に対する内発的な動機づけを弱くしてしまう可能性があることを示している。現代の世の中ではパフォーマンスに基づいて報酬が決められるシステムが急速に広がっており、この“アンダーマイニング効果”はタイムリーで経験的な示唆を持っている。このアンダーマイニング効果は、金銭報酬が純粋にモチベーションを高めるとする経済学の理論や強化学習理論に対する理論的な挑戦でもある。この挑発的な現象は経験的にも理論的にも重要であるにも関わらず、その神経基盤は明らかにされていない。我々は新しく開発したタスクを用いて、このアンダーマイニング効果を引き起こし、機能的MRIを用いてその神経基盤を検討した。その結果、パフォーマンスに基づいた金銭報酬が内発的な動機づけを弱めることが明らかとなった。また、アンダーマイニング効果に伴って、前部線条体と前頭葉領域の活動が低下した。これらの結果は皮質‐基底核評価システムが外発的報酬の価値と内発的なタスクに対する価値を統合することによってアンダーマイニングが引き起こされることを示唆している。

 

外発的動機づけと内発的動機づけについて

この論文の著者である玉川大学脳科学研究所の松元健二教授のホームページにわかりやすい解説が載っていますので、ご覧ください。

http://www.tamagawa.ac.jp/teachers/matsumot/matsumoto_lab_jp/commentary.html

 

Kou Murayama, Madoka Matsumoto, Keise Izuma, and Kenji Matsumoto (2010) Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation. Proc Natl Acad Sci U S A. 107 (49) : 20911-6.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21078974

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Visual neglectとExtinctionは異なる視覚性注意システム異常から区別できる

 

 

 

近年ヒトの脳構造および神経機能画像テクニックの進歩により損傷脳を対象とした研究も盛んに行われるようになってきています.今回は急性期の右脳卒中患者において出現頻度が高く,臨床上判別が難しいとされていた視覚性無視(Visual neglect)と消去現象(Extinction)の発現メカニズムの相違を構造画像テクニック(Lesion mapping)および神経機能画像(task-related fMRI)を使用して明らかにした研究を紹介します.

 

 

 

TitleAcute visual neglect and extinction: distinct functional state of the visuospatial
attention system

 

「急性期のVisual neglectExtinction:異なる視覚性注意システムの機能状態」

 

 

 

対象:初発で右中大脳動脈領域の脳卒中患者右33例,健常コントロール15

 

方法:脳卒中患者は臨床徴候(観察)と神経心理学的検査結果を基にVisual neglect群,Extinction群,いずれの症状も呈さない群の3グル-プに分類された.これらの群に健常群を合わせて4群で視覚性課題(PC画面の左右に出現したターゲットにできるだけ速く反応する課題)の成績と課題遂行時の脳活動を比較した.脳卒中患者3群においてはそれぞれ損傷部位の重なりの程度(Lesion mapping)が示された.

 

結果:Lesion mappingの結果よりVisual neglectは他の患者グループより損傷領域が広範であるが,Extinctionは比較的限局した病巣を示した.視覚性課題の成績は無視群で最も低く,右視野では80%以上正確に反応できるも,左は25%程度であった.Extinctionはいずれの視野においても90%以上正確に反応できた.課題遂行時の脳活動ではVisual neglectは右頭頂,後頭領域,および左前頭眼野の活動減少が特徴的であったが,Extinctionは他のグループとは対照的に左前頭前野の活動上昇が認められた.また左視野のターゲットと脳活動の相関ではVisual neglectExtinctionの両者で左前頭,頭頂葉に有意な相関が認められた.

 

考察:これらの結果から少なくとも急性期脳卒中においては左頭頂葉の活動上昇が無視の特異的な現象ではないこと,また左視野のターゲットに反応する際の左前頭,頭頂葉の賦活は対側である右半球損傷後の代償的な役割を果たしている可能性を示したものであるかもしれない.

 

 

 

急性期脳卒中の臨床において区別が難しいVisual neglectExtinctionを構造,機能の両面から解析し,その相違を明確にした研究であり,今後の臨床においてもこの知見を有効に利用し,意識的に診療にあたっていければと思います.もしこの左前頭頂領域が代償的な役割を果たしているのであれば,機能に直接的に働きかけるこのような課題が脳の可塑にどのように影響しているのか,神経回路の再構築,再組織化,またdiaschisisからの回復などが示されたら,リハビリテーションのエビデンス構築に大きく貢献する可能性があるのではないかと思いました.

 

 

 

Umarova RM, Saur D, Kaller CP, Vry MS, Glauche V, Mader I, et al. Acute visual neglect and extinction: distinct functional state of the visuospatial attention system. Brain. 2011; 134:3310-3325.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21948940

 

 

 

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海馬の働きが人の選択に影響を与える

海馬は記憶に関わると古くから言われてきました。この研究では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI: functional magnetic resonance imaging)を用いて、海馬が記憶に関わる処理だけでなく、その後の人の選択行動にまで関わっていることを明らかにしています。最近は単一の脳領域の役割を検討するだけでなく、複数の脳領域の機能的な結合性が持つ役割も検討されることが一般的になってきています。まさにこの研究でも海馬と線条体の機能的な結合が重要だという話が出てきています。最近の研究を見ていると、海馬は主観的な価値の処理にも関わっていると報告している研究者が結構いるので、記憶と価値判断の関係を調べる研究は今後更に増えていくかもしれません。

 

要約

人は未経験のもの同士を比べて毎日のように新しい選択を行っている。そのような意思決定はしばしばとても素早く、かつ自身に満ちたものである。我々は、海馬-長期の陳述記憶における役割が昔から知られている-が、未経験の選択肢同士の間でどちらを選択するかという意思決定をガイドしていることを明らかにした。人を対象とした脳機能画像研究から、人が金銭を受け取ると既に存在する記憶のネットワークの活動が高まることが明らかになった。更に、記憶に保持されている報酬価を持たない対象に対して、正の報酬価を付加することが明らかとなった。この意思決定に対するバイアスは、海馬の活動、連合記憶の再活性化、そして海馬と報酬に関わる領域の結合性によって説明できた。これらの知見は、脳が記憶を形成する際の連合メカニズムから、どのように未経験の選択肢間で選択が自動的に行われるのかを説明するものである。更に、我々の知見は、価値に基づいた意思決定におけるこれまで知られていなかった海馬の役割を明らかにするものである。

 

G. Elliott Wimmer and Daphna Shohamy (2012) How memory mechanisms in the hippocampus bias decisions. Science. 338:270-273.

http://www.sciencemag.org/content/338/6104/270.abstract

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金銭報酬のパラドックス

何かの課題をクリアした際に得る金銭報酬は人々のモチベーションを高め、パフォーマンスを高めると言われていますが、あまりにも報酬が高くなりすぎると、その課題を失敗したら報酬がもらえなくなってしまうという潜在的な損失への危機感によって逆にパフォーマンスが下がってしまうようです。本人が気負いすぎるような大きな報酬は、本人のためにならないのかもしれません。リハビリテーションや教育分野でこのような認知神経科学研究の知見を活かしていけないでしょうか?

 

要約

雇用主はしばしば働き手をやる気にさせるために能力に応じて給料を支払うことがある。我々は新しく開発した課題*1を用いて、被験者のパフォーマンスに基づいて支払われる金銭報酬に対する行動の変化の背景に存在する神経基盤について検討した。被験者の課題に対するパフォーマンスは報酬額が大きくなればなるほど高まった。しかしながら、報酬額が高くなりすぎるとパフォーマンスが逆に下がってしまうという矛盾した結果が得られた。

報酬が大きくなりすぎると、最初に報酬が呈示されてから、課題を遂行するまでの間に線条体の活動が急激に低下した。パフォーマンスの低下と線条体の活動の低下は損失回避傾向*2に関する行動データから直接予測することができた。これらの結果は、課題の成功によってもたらされることがわかっている報酬が最初は潜在的な利得として符号化される一方で、実際に課題を行うときには被験者が課題の遂行を失敗したときに生じる潜在的な損失を符号化していることを示唆している。

 

*1この課題では、課題を行う前に、課題をクリアしたら支払われる報酬の額が呈示されます。それに引き続き、実際に被験者に課題を遂行してもらいます。

*2損失回避傾向とは、利得よりも損失を重視する傾向を指します。この傾向は人によってバラつきがあることがわかっています。

 

Vikram S. Chib, Benedetto De Martino, Shinsuke Shimojo, John P. O’Doherty. (2012) Neural Mechanisms Underlying Paradoxical Performance for Monetary Incentives Are Driven by Loss Aversion. Neuron. 74:582-594.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22578508

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不全麻痺上肢の運動調整機能の質は,発症5週目まで改善する

最近の研究において麻痺上肢機能の指標として運動調整機能が使用されているのが散見されます.今回紹介するのは,発症6か月までの麻痺上肢の運動調整能力の回復を三次元解析にて調査した縦断的コホート研究です.

 

タイトル「脳卒中後の麻痺上肢の運動調整機能の質に関する時間の影響」

対象:初発の不全片麻痺で発症3週間以内に握り動作が可能な44例(58±12歳)

方法:発症1234581226週の時期に前方にある5cm3の立方体へのリーチと握りと立方体の移動に対する三次元解析にて運動時間,運動軌跡(リーチと手指の開口)の円滑さを測定した.

結果,発症5週目まで有意に運動時間,運動軌跡の質ともに改善した.神経学的自然回復によって不全麻痺上肢の運動調整能力は,発症8週までに回復することが示された.

 

発症3週目までに対象物を把持できれば,対象へのリーチや把持の仕方の質は発症5週間まで自然回復していく.もし,運動軌跡をリハビリテーションに取り入れることができたなら自然回復曲線を早めることができるのか.8週以降も回復曲線を描くことができるのか.回復期での機能訓練方法開発のヒントとなりそうですね.

 

van Kordelaar J, van Wegen E, Kwakkel G. (2014) Impact of time on quality of motor control of the paretic upper limb after stroke. Arch Phys Med Rehabil. 95 (2):338-44.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24161273

 

 

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半側空間無視の介入には覚醒度や持続性注意の訓練がより重要かもしれない

 

半側空間無視(USN)は、しばしば非空間性の注意障害(持続性注意、選択性注意、覚醒度)を伴う。近年の研究では非空間性の注意が、USNに影響していると考えられており、持続性注意や覚醒度を上げる介入がUSNに効果的であったとする報告が散見される。例えば*Tonic and Phasic Alertness TrainingTAPAT)をUSN患者に実施したところ、介入後に、視覚的探索や二等分試験に改善がみられたという報告がある。この実験では、TAPATを用いた介入の目的が覚醒度を上げることを目的としているならば、TAPAT課題は視覚的な課題でなくても(聴覚的課題でも)USNに効果的なはずである」、ということを検証している。8名の患者に聴覚的なTAPAT9日間(36min / day)実施したところ、待機群と比較して、介入後の視覚探索、二等分試験などで有意な成績の向上がみられた(3週後には待機群と変わらないくらいに成績が戻った)。重要なのは、聴覚的TAPATが、モダリティを超えて、視覚的なUSN評価の成績を改善させたことである。USNには覚醒度や、モダリティを超えたより上位のシステムが影響しているかもしれない。

 

 

 

*聴覚的TAPAT:音刺激の中でターゲットとなる音を決めておく。ターゲット音とDistractor(妨害刺激音)をランダムに鳴らし、被験者には、ターゲット以外であればボタンを押し、ターゲットであれば反応しないように指示する。

 

 

 

Van Vleet TM, DeGutis JM. (2013). Cross-training in hemispatial neglect: Auditory sustained attention training ameliorates visual attention deficits. Cortex, 49, 679-690.

 

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22578712

 

 

 

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